「忌み言葉」とは何かその意味を知ろう
「お葬式で使ってはいけない」と言われている忌み言葉。その存在は、多くの人が知っていることでしょう。ここでは、忌み言葉以外にも避けた方がよい言葉についてお話していますが、まずは基本の「忌み言葉」についてから見ていきましょう。
忌み言葉、その具体例を知る
使ってはいけない言葉の具体例としてよく挙げられるのは、
・重ね重ね
・たびたび
・またまた
などのような言葉です。
これらはすべて、「(不幸が)重なる」という意味合いを持つため、どのような宗教でも嫌われます。
少し横道にそれますが、葬儀の装いとして非常にメジャーな「真珠のネックレス」ですが、
これがOKなのは、一連のものだけです。二連のものは、忌み言葉同様、「不幸が重なること」を連想させるため、使ってはいけません。
ちなみに、一連の真珠のネックレスが可とされるのは、「涙のしずく」を表す表現であるからです。ただし、真珠のネックレスは、つけなければいけないものでもなければ、つけた方がベターなものでもありません。つけてもよいし、つけなくてもよい、という程度のものです。
宗教によって違う、「プラスの忌み言葉」
上であげた重ね言葉は、どのような宗教でも厭われるものです。しかし、それ以外にも、宗教によって避けるべき言葉があります。
よく使われがちな言葉である「ご冥福をお祈りします」という慣用句ですが、
これが使えるのは仏教式のお式だけです。
これは仏教用語ですから、キリスト教や神式のお式では使ってはいけません。また、同じ仏教式であっても、浄土真宗の場合は使えません。これにはそれぞれ理由があります。キリスト教の死生観では、「天国に行って、神様の元で永遠の安らぎを得る」という考えがあります。そのため、昔の葬儀の挨拶などの文章では、「喜べ、彼の人は神のもとで永久の幸せを得たのだ」というような書かれ方をした、とも言われています。
神式の場合は、亡くなった方は「守り神として子孫を見守ってくれる」という死生観があります。そのため、「今あるところを離れて、死後の世界で幸せになること」を意味する言葉は使えないのです。
浄土真宗の場合は、「亡くなった後すぐに幸せになる」という考え方をすることから、「ご冥福をお祈りします」という言葉は使えません。
使わない方がいい言葉の具体例
さて、ここからは、「忌み言葉」とまでは言われないまでも、避けた方がよい言葉についてお話していきましょう。避ければベターな言葉、教えてしまいます。
「天国で幸せに」「お悔やみ申し上げます」を避けるべき理由
日本人は、良くも悪くも、宗教に対してそれほど強いこだわりはもっていない、と言われています。よく言われることですが、日本人の多くは、お正月に神社に参拝し、お盆ではナスの牛やキュウリの馬を飾り、クリスマスをお祝いします。
このような宗教観であるからか、仏教などのお式のときであっても、深く考えず「天国で幸せに」というような表現を使ってしまうことがあります。
また、仏教でも「天」に相当する言葉があるので、厳密にいえば間違いとまでは言い切れません。しかし、キリスト教における「天国」と、仏教における「天」はやはり意味合いが違うので、避けた方が無難です。
「ご冥福をお祈りします」がダメ、ということを知っていても、「お悔やみ申し上げます」が場合によってはNGになることは、知らない人も多いのではないでしょうか。
これも、実は死生観に関係しています。上でも述べたとおり、キリスト教においては、死は悲しむべきものではありません。そのため、死を惜しむような、「お悔やみ申し上げます」といったご挨拶は、本来ならばそぐわないのです。
どんな宗教でも使える万能な言葉をお教えします!
ただ、このように考えていくと、「結局どの言葉を使ったらいいかわからない!」「ええっと、間違えてしまいそうで不安・・・」「そんなに冷静に挨拶なんかできない・・・」と混乱してしまう人もいるかと思います。
そこで、元葬儀会社勤務の私が、どんな宗教(一般的なもの)でも使える、万能な言葉をお教えします。それが、これです。
「故人の安らかな眠りをお祈りしています。○○さん(ご遺族のなかで、自分とかかわりがあった方のお名前)もご家族の方も、お体とお心を労わってお過ごしください。」
この言葉なら、仏教でも神道でもキリスト教でも失礼にあたりません。また、「天国」という表現のかわりとしては、「空の上」が使えますので、こちらも覚えておいてください。
大切なのは何よりも「こころ」
ご遺族のこころというのは、大変繊細であり、傷つきやすい状態です。そのため、できる限り、失礼になる言葉や、傷つけてしまいかねない言葉は避けるべきです。
しかしながら、一番大事なのは、何よりも「こころ」です。故人の死を悼み、ご遺族の心に寄り添うという気持ちがあれば、たとえ言葉を失ってしまっても、言葉を間違ってしまっても、それは失礼にあたりません。
あなたの心のなかの気持ちを、素直に伝えることが大切です。
素直な言葉で伝えよう
葬儀には、忌み言葉のほかに、使うことを避ける方がベターな言葉があります。しかしながら同時に、葬儀において何よりも大切なのは、弔いといたわりの気持ちです。
もちろん、このような「忌み言葉」「使うべきではない言葉」を覚えておくことはとても大切ですが、故人を思い遺族を思う気持ちは、素直な言葉にもきっとこもっているはずです。