葬儀の装い、その意味について
葬儀の席というのは、ある意味では結婚式以上に「きちんとした装い」が求められる場です。大切だった家族を亡くして、遺族は気落ちしています。
そのときに、常識外れな格好で参列してしまうと「この人は故人を大切に思っていなかったのだろうか」「ふざけているのだろうか」という、落胆と怒りを招いてしまうこともあります。
もちろん、一番大切なのは「素直に弔う気持ち」です。しかしそれを表すために、まずは基本の「常識」を知っておかなければなりません。葬儀の装いについてお話ししていきましょう。
ここでは混乱を避けるために、「前日の夜に行う式=お通夜」「翌日に行う式=告別式」「お通夜や告別式をあわせた、冠婚葬祭の意味での言葉=葬儀」としています。
片化粧の意味と薄墨の意味
あなたが、一度でも葬儀に参列したことがあるのであれば「片化粧」「薄墨」という言葉を耳にしたことがあると思います。今回は、この2つの意味についてみていきます。
片化粧というのは、女性のメイクに関する言葉です。これは、いわゆる「薄化粧」を指します。派手な色合いや濃すぎるメイクは避けましょう。具体的にいうと、マスカラやつけまつげはNGです。アイシャドウに関してはグレーゾーンですが、入れるならばブラウン系のものを選びます。
口紅は薄い色合いを、グロスはNG
片化粧のとき、しばしばとりあげられるのが「口紅」です。私の周囲ですと、「悲しみで紅もひけない」という意味を表すとして、「口紅はひかない」という考えが主流でした。
しかし現在は「薄い色合いならばよい」としているケースもありますね。ちなみに、テカッてしまうグロスはマナー違反です。
チークに関しても同様で「血色がよほど悪いのでなければ避ける」という意見もあれば「可」としているケースもあります。いずれにせよ、つけるならば薄い色合いを選びましょう。
ちなみに、厳密には「服装」とは違いますが、香典袋などは薄墨で書くのが正式です。これは「(故人を亡くした涙で)墨もにじむ」「墨がすれないほどに、力を落としている」という意味です。ただ、現在はそこまで厳密ではなく、「薄墨でなければダメ」ということはありません。
お通夜のときは喪服NG、その理由
「お通夜には喪服で」と思っている人もいるかもしれません。しかし、これは基本的にはNGです。
というのも、お通夜のときというのは、「急に起こったこと」に対して行動する、という意味合いが強いのです。お通夜に喪服で行ってしまうと、「死ぬことを予想していた」ととられるため、バッドマナーにあたります。
このときの装いとしては、ダークスーツや黒いワンピースです。女性の場合は黒いストッキングを合わせます。一応「肌色でも可」と言われていますが、黒いストッキングの方が望ましいでしょう。
「リクルートスーツは大丈夫なのか」という質問もありますね。これに関しては、「お通夜なら可、ただし告別式の場合はNG」と言われています。ただし、学生や20歳前の社会人ならともかく、それ以上の年齢になっていたのなら、やはり礼服は持っておくべきです。
真珠のアクセサリー「していくのがベター」か「OK」か
葬儀を取り扱ったドラマなどを見ていると「真珠のアクセサリー」を身に着けている女性が多い、というのは気づくと思います。このようなことがあるからか、しばしば「真珠のアクセサリーを持っていないのだが、それでも大丈夫か」という質問が出てきていました。
真珠のアクセサリーは「涙の粒」を表すことから、葬儀の場面で使ってもよいとされています。冠婚葬祭、あらゆるところで使えるアクセサリーでもあります。
しかし真珠のアクセサリーは「これをつけなければならないもの」ではありません。あくまで任意であり「つけても可、まったくなくてももちろんかまわない」というものです。そのため、葬儀のためだけに改めて購入する必要はありません。
基本はなにもつけないこと
真珠のアクセサリーは「可」としました。しかし、真珠を使ったものであっても、二連になったものは使用してはいけません。「悲しみが重なる」という意味になるからです。
アクセサリーはどの範囲まで許容されるか?という問題ですが、これは「結婚指輪まで」だと考えてよいでしょう。葬儀の場合は、あくまで「何もつけないこと」が前提です。その上で「結婚指輪や真珠ならば許容される」という話になるのです。迷ったのなら、何もつけないことをおすすめします。
故人をいたわる気持ちを表すために、迷ったら正式なマナーを尊重して
葬儀のときの装いというのは、最終的なことを言えば、「遺族や故人をいたわる気持ちがあればよい」ということになります。
また、現在はそれほどマナーにこだわらない、というケースも増えてきており「(告別式ならいざしらず、それ以外では)黒いスーツならばよい」「派手な装いでなければいい」と考える人もいます。
ただ、迷ったのなら、やはり「一般的な」「くだけていない」方の考えを尊重するのがよいですね。
喪服の流行を追う必要はない
ちなみに、喪服にも一応流行はあります。しかし、基本的にはあまり気にしなくてもよいでしょう。葬儀の場はファッションショーではなく、人の死を悼むための場なのですから、失礼にならない恰好であれば十分です。
喪服の手入れは、クリーニングに任せるのが一番安心です。ほつれや退色などが見えたら買い換えましょう。
「遺族の気持ちに配慮する」ことが一番大切
とても特徴的なお話なのですが、中には「完全な普段着で来てほしい、喪服や黒い服も必要ない」という要望が遺族側から寄せられるケースもあります。レアケースではありますが、「格式ばった送り方ではなく、友人に囲まれて、パーティーのような形で見送りたい」「今までと同じようにしたい」という遺族の考えによるものです。
このような場合は、遺族の気持ちに寄り添い、その要望を尊重する方がよいと思われます。葬儀の場面において、遺族側がこのような要望を参列者にもわかる形で出す、というのは、とても強い決意と意向の表れだからです。
地方によっては常識が異なる場合も
葬儀には地方差もあります。一例として、山形県をあげましょう。山形県の一部などでは、なんと、葬儀のときに振袖を着る風習があるのだとか。
ここまでの例ではなくても、地方によって葬儀の装いというのは微妙に異なることもあります。そのため、あなたにとっての「常識」が、ほかの県の人にとっての「非常識」であることも・・・・・・。
このようなことを避けるためには、地場の人に、葬儀の装いについて聞くのが安全です。「特に知り合いがいない」ということであれば、葬儀式場の人に電話して聞くとよいでしょう。
葬儀のときの装いは遺族の気持ちに添うのが重要
葬儀のときの装いというのは、遺族の気持ちと故人に最大限配慮する必要があります。お通夜の場合は、リクルートスーツなどで行ってもかまいません。ただし、喪服は逆にバッドマナーとなるので避けましょう。
アクセサリーはつけないのが基本であり、つけるとしたら一連の真珠を選びます。化粧も派手なものは避けます。
葬儀の装いは、地方差などもあり、なかなか難しいものです。ただ、葬儀の場に「個性」は求められませんから、不安ならば「一般的な」服装にしましょう。