通夜と告別式は何が違う?
日本における葬儀は、いわゆる「葬式仏教」とさえ揶揄される仏式葬儀をベースにしたものが広く普及しています。そのためキリスト式・神式の葬儀も仏式葬儀に影響を受けた形になっています。
仏式葬儀では通夜と告別式が執り行われ、二日にわたって故人との最後のお別れをすることになるのが一般的な流れですが、本来の仏式葬儀では通夜と告別式がセットになっていたわけではないのです。
では、通夜と告別式は本来どのようなものなのでしょうか?
本来は夜通し弔問する通夜
葬儀の一日目に行われるものとされる通夜は、本来故人と生前親しかった友人・知人が弔問に訪れて故人の家族や親戚と思い出話をしながら一夜を明かすものです。つまり、「夜通し行う」から「通夜」なのです。
通夜では夜が明けて日が昇るまで喪主と家族は置き続けて、祭壇の蝋燭と線香を絶やさないようにするという慣習があります。最近は長時間付けられる渦巻き式線香の普及で家族の負担も軽減されてきています。
通夜に参列した弔問客には「通夜振る舞い」として食事などが提供されます。大皿料理や寿司のようなものから、持ち帰って食べてもらえるようなお菓子・お弁当まで様々ですが大体の場合、故人とごく親しかった間柄の人のために用意されています。
通夜本来の役目は仮通夜に
現在の葬儀では、通夜本来の役割であった「夜通し蝋燭と線香の番をしながら故人の思い出を語りあう」ことは通夜の前の仮通夜に引き継がれる形になっています。
仮通夜は故人の家族・親族だけで行われる通夜で、弔問客を受け入れないのが特徴です。
通夜の前に火葬を済ませてしまう地域でも、仮通夜までは火葬しないことが多いので事実上、最後のお別れを済ませる場として働いているといえます。
現在の通夜は葬儀の本番である
仮通夜が本来の通夜が持っていた役割を果たしているならば、現在の通夜は葬儀の本番といってもいいでしょう。
通夜はセレモニーとしての側面を持っているので、司会によって式次が進行されていきます。
大体の流れとしては開式の挨拶、故人の紹介、読経、焼香、弔電・弔辞、献花者の紹介、閉式のあいさつとなります。
お別れを告げに行く告別式
通夜の翌日に執り行われる告別式は、本来は葬儀とは全く無関係のものでした。
日本で最初に告別式が行われたのは、1901年に亡くなった思想家の中江兆民の葬儀で、最初は無宗教葬の一つとして行われたといわれています。
芸能人や有名人が亡くなった後にファンに向けて行う「お別れの会」が、告別式の本質であると考えてよいでしょう。
告別式では、参加した多くの人が出来るだけ故人との最後のお別れを済ませられるよう通夜を簡素化した内容が行われます。基本的な内容としては生前の故人の紹介とお坊さんによる読経、参加者全員による焼香、喪主・遺族からのあいさつ程度です。
通夜・告別式の両方に出るべきか?
もしも「知人・友人の葬儀がある」と聞いて、運よくスケジュールをあけることが出来た場合あなたは葬儀にどう出席すべきでしょうか。
答えは「通夜・告別式のどちらかだけに出席してもいいし、両方に出席してもいい」です。
本来ならば故人と親密な関係であれば通夜に出るべきだし、告別式にも出席しなければなりません。
逆に故人とは友人と言えるほど親しい間柄でなかったのならば通夜には出ず、告別式だけに出るのが筋というか慣習であるといえます。
しかし、通夜と告別式が本来の役割からかけ離れてしまった今となっては、親しいかどうかで通夜への出席を決められるということはありません。
葬儀への出席は参列者の都合に合わせてしまっても構わないのです。通夜に行けるのであれば通夜に、告別式にしか間に合わないのなら告別式に、時間に余裕が十分にあるのなら通夜・告別式両方にというように好きなようにしてしまって構わないのです。