香典返しのルールと事情|葬儀Book

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2015年2月19日
香典返しのルールと事情

「香典返し」 というのは仏教を前提とした言葉ですが、神道やキリスト教でも、これに相当するものを用意します。 でも、香典返しってどういう意味があるか、また、用意するときの形式はどうなっているのか、ということはご存知ですか? 今回はそのあたりについてお話をさせていただきます。 なお、基本的には仏教式を中心としたお話になることをご了承ください。

ファイナンシャルプランナー(AFP)兼WEBライター
  

●香典返しは必ず贈らなければならない義務があるの?

一般的に、仏教においては命日の四十九日(七七日忌)の法要を行うことによって、喪が明けると考えています。
そのときに、葬儀で頂いた香典に対するお礼の品をお返しする、という習慣が長きにわたって行われてきました。

香典 しかし、香典返しは必ずしなくてはいけないというものではないことはご存知でしょうか?

本来、香典は故人の冥福を祈って手向ける、お香の代わりに霊前にお供えするお金です。
そのお金には「故人が亡くなって大変なのに、お手伝いもできなくて申し訳ないので、お金を出させていただく」という意味もあります。
相互扶助の関係、と言えばわかりやすいでしょうか。「大変なときは、助け合いましょう」ということですね。

そういった背景もあるので、必ずしも通夜、告別式に参列し香典を頂いたすべての人に香典返しをする必要はないのです。香典返しの代わりに、喪が明けたことを通知する挨拶状(会葬御礼も兼ねていることが多いです)を送れば大丈夫です。

なお、神道、キリスト教の場合でもこのようなしきたりはあります。
神道においては、忌明けの霊祭(五十日祭)に、キリスト教においては、一ヶ月後の召天記念日を目安として、挨拶状を添えてお礼の品を送ることが仏教の香典返しに当たります。

●香典返しの贈り方について

さて、先ほどから「香典返しは四十九日が明けてから贈る」と書いてきました。ところが最近ではこの慣習に変化が出てきています。
香典返しの贈り方にも「即日返し」と「後日返し」というバリエーションが見られるようになったのです。

それでは、これら2つの方法のやり方とメリット、デメリットを見比べてみましょう。

<即日返し>

やり方:
・通夜、葬儀の当日に相当額の香典返しの品を用意する。
・会葬御礼品とともに、香典を頂いた方に対しては用意した香典返しの品を渡す。
・一定の金額(10,000円が目安)以上の香典を頂いた人には、四十九日が終わったタイミングで挨拶状とともにお返しの品を送付する。

メリット:
・香典帳には香典を頂いた人の名前だけを書けばいいから記入が楽である。
・高額の香典を頂いた人に対してのみ商品を選んで贈ればいい。
・香典返しを葬儀のタイミングで用意することで、かかった費用が葬儀の経費として認められる。そのため、相続税の観点から有利。

デメリット:
・あらかじめ香典返しの品を用意しておかなければいけないので、香典を頂いた相手に応じて香典返しの品物を選ぶことはできない。
・香典を頂いた人全員に同じ品を渡すことになるので、頂いた香典の金額に見合う品であるかはわからないことが多い。
・会葬御礼の品も別に渡すので、通夜、告別式に参列した人の手荷物が増えてしまう。
・「香典返しは後日頂くもの」と思っている人もいるので、「当日頂いた品が香典返しである」ということを理解してもらえないことがある。そのため「香典返しも渡さないなんて失礼ではないか」と思われるというトラブルも起こりうる。

<後日返し>

やり方:
・通夜、告別式当日には会葬御礼品と会葬礼状のみを参列者に渡す。あくまで会葬して頂いたことのお礼、という意味をこめている。
・後日、四十九日の法要が終わった後、改めて「香典返し」としてお礼の品を贈る。

メリット:
・香典返しを贈る相手に応じ、それぞれに合った商品を選択することできる。
・また、香典として頂いた金額に見合った商品の選択ができる。
・通夜、告別式の当日は会葬御礼だけを渡すので、参列者の荷物が増える心配はあまりない。
・昔から一般的にはこちらの方法が採られているので、参列者にも理解してもらいやすい。

デメリット:
・住所、氏名、香典の金額など、香典を下さった方の情報を整理しなければいけないので、その手間がかかる。
・葬儀が終わってからの出費となるので、相続税法上の恩恵は受けられない。

 香典返しの贈り方としては、どちらを選んでもいいのですが、相続税上の恩恵を受けたい人は即日返し、昔ながらのやり方で行いたい人は後日返しを選択することが多いようです。

●実際、香典返しでよく贈られるものは何?

ある程度の年齢に達した人なら、一度は通夜、告別式には参列したことがあると思います。そのときに香典返しを頂いたことがある人も多いはずですが、香典返しで贈られるものには意味がある、ということはご存知でしたか?
いくつかの品について、その意味をご説明します。

まず、現在でもポピュラーなのがお茶と砂糖

お茶は軽くて日持ちもするから、という理由もありますが、本来は「お茶を飲んで故人を偲ぶ」という意味で用いられます。
お茶と同じくらい昔から用いられている品であるのが「砂糖」。
亡くなった人が棺に入るときに白装束を着せられるように、仏の世界と縁の深い色である白を象徴する品として用いられるようです。また、消耗品であるため、不幸せなことが連鎖しないように、という魔よけとしての意味もこめられているそうです。

食器や金物など

魔よけとしての意味がある、ということでは、スプーンやフォークなどの「家庭用金物」もよく用いられる品の一つです。
これは、昔から光るものが魔よけとして用いられてきたことに由来します。
 

カタログギフト

他にもさまざまな品が香典返しの品として使われていますが、最近人気があるのが、デパート等のカタログギフトです。
これは予算に応じてカタログを選べて、香典返しを受け取る人が好きなものを手に入れることができる、ということでよく使われるようになりました。
「あの方にはいったい何を贈ればいいかしら」とあれこれ悩むのは、遺族にとっても相当なストレスになります。ただでさえ葬儀やその他の手続きで疲れているのに、香典返しの品目でも悩むのはかなりきついはずです。カタログギフトは、そんな「きつさ」から開放される手段として効果的なようです。

●まとめ
一言で「香典返し」と言っても、贈る意味や贈り方はなかなか勉強する機会がないものです。
自分がお渡しする側になっても、頂く側になっても困らないように、しきたりにこめられた意味を勉強しておくと、あわてなくて済むでしょう。
とくに、葬儀はいつ起こるかわからないものなので、「備えあれば憂いなし」の精神で知識を蓄えておくことが大事です。誰の人生も、いつかは「終わり」を迎えます。そのときに、知識が無くてあわてるよりは、知識をつけておき、落ち着いて送り出せるほうが素敵だと思いませんか?

著者:松沢未和

ファイナンシャルプランナー(AFP)兼WEBライター
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2014年にファイナンシャルプランナー(AFP)の資格を取得した兼業WEBライターです。もともと文章を書くことが大好きなので、この仕事を兼業として選びました。相続や保険の分野のお話をわかりやすくまとめてお話できればと思っています。これ以外にも、たくさん資格は持っているので、資格の取り方の話しもしたいところです。また、食べ歩きと旅行とコスメ研究が大好きです。日々の研鑽の成果!?を文章にぶつけていきたいです。至らない点がいろいろあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。