今急増している直葬の理由は費用問題だけではないかも
一般的に葬儀とは、順序が前後することもありますが通夜・告別式を経て荼毘に付され、先祖代々のお墓や納骨堂にお骨を収めるところまで行うものです。
宗派によっていろいろ異なる部分も出てきますが、日本での葬儀は大体このような流れで行われます。
しかし、最近は通夜・告別式を行わずに直接火葬場へ行き荼毘に付され、納骨を済ませるという「直葬」が増え始めています。なぜ今、従来の葬儀ではなく直葬を行うのでしょうか?
葬儀費用はとにかく高い!
直葬が増えた理由として言われるのが、「葬儀費用が高い」ということです。葬儀費用の内訳は祭壇・棺・花・供物・会場レンタル費・香典返し・火葬料などで、日本国内での葬儀費用の平均は約236万円といわれています。
実際には、150万円~200万円程度の費用で葬儀が行われることが多いのですが、それでも新車一台分の価格に相当する高額費用であることには変わりありません。
お坊さんに払うお布施が高い!
導師として葬儀で読経していただくお坊さんは、先祖代々のお墓がある菩提寺に頼むか葬儀屋の伝手を頼るなどして来ていただくことになります。
お坊さんへお布施として払う額の全国平均は約53万円。これには故人に付けられる、仏様の弟子としての名前である戒名代も含まれています。
戒名には6文字・9文字・11文字と、長くなれば長くなるほど偉いことになるのですが生前から菩提寺に寄付をしているとか、戒名料を奮発するといったことをしないと長い戒名がもらえないことになっています。
お布施・戒名料に関しては、寺院やお坊さんごとに額が変わるのではっきりした相場はないものといえます。
直葬は葬儀費用が安い
通夜・告別式を経て火葬・埋葬という手順を踏む通常の葬儀に対して、火葬・埋葬で済ませる直葬は葬儀会場の準備を必要としないので、葬儀費用が安く済むという特徴を持っています。
直葬費用は火葬代・遺体の運搬・埋葬費用込みで20万円前後と、通夜・告別式がない分だけ安くなっているのがはっきりとわかります。
なぜ直葬が増えているのか
日本における葬儀費用の高さは直葬を増加させる要因の一つになっているといえます。
しかし、経済的な理由よりも別な理由で直葬せざるを得ないケースが増加していることもまた事実なのです。
進む無縁社会化
葬儀は、地縁や血縁による故人ゆかりの人が集まり生前の故人を偲ぶ集会としての一面を持っています。
つまり、逆に言えば地縁・血縁に乏しい人が亡くなると葬儀を行って故人ゆかりの人を集める必要は薄いということになります。
このような、人間関係が希薄で孤立した生活を送る人が増加する「無縁社会」が進行していることも直葬が増える要因の一つです。
孤立した人が亡くなっても葬儀を出してくれる家族はいないし、葬儀に参列してくれる人もいない。それどころか先祖代々の墓がないので無縁仏になるしかない…という人も少なくないのです。
葬儀を行うことに合理性を見出せない人の増加
これは葬儀費用の高さも絡んでくる話なのですが、「葬儀は坊主や葬儀屋の搾取、だからやらなくていい」という考え方がネットのあちこちで見受けられます。
葬儀は一種のセレモニーというか、「故人との最後のお別れ」「悲しみに一区切りをつけるための通過儀礼」という非日常性を含んだ会合であるといえます。
しかし葬儀費用の高さや年季法要の煩わしさ、感情の希薄化などから、「葬儀を行うことそのものに合理性を感じられないから、直葬で十分」という風に考えてネット上で発信され、考えに同調する人が増えているようです。