意外と縁起がいい?生前葬
死生観というか、生と死について深く考えることはよりよく生きることに繋がるものです。
ローマの将軍は大勝利を収めても決して慢心しないように、付き人に耳元で「メメント・モリ(死を思え)」とささやかせたという話がありますが、それと同じことです。
生きているうちから自分の葬儀について考えておくことも、死生観の一つです。そして、生きているうちに自分の葬儀を行う「生前葬」も、死生観の究極の形であるも言っても過言ではないでしょう。
生前葬では何を行うのか
故人(とされる人)が生前のうちに葬儀を済ませてしまう生前葬は、いわば葬儀の形式を模したパーティです。
普通の立食パーティとの違いは、「会場を飾る花が白菊・白百合・樒などの葬儀花」「BGMの代わりに導師の読経」「喪主兼故人の遺影が飾られている」というような葬儀に模している部分でしょう。喪主兼故人が棺の中に入って最後のお別れをすることさえあり、一種コントのような雰囲気さえあります。
それ以外は和気藹々とした雰囲気の中で、喪主兼故人と友人・知人が飲食したり話し合ったりして形式上喪主兼故人を偲ぶことになります。
つまり、葬儀の「最後のお別れ」をもっと有意義に行おうというのが生前葬の主旨なのです。
生前葬は縁起がいい?
生前葬は「葬儀を模したパーティ」であるため、不謹慎かつ縁起が悪いものと長らく考えられてきました。しかし、最近では「生前葬は縁起がいい」と考えられており、厄払いを兼ねて行うことも少なくありません。
なぜ縁起がいいのかというと、仏教において生前から自分の墓所を準備することや、自分の死後のために生前から供養を行うことは功徳の高い行いであるとされています。
功徳を積むことは善行を積むことであり、善行を積むことは巡り巡って自分の利得に繋がるものです。
生前葬を行った有名人は?
生前葬は生きているうちに葬儀を行うという、ある意味で不謹慎なものであったことから倦厭する人が少なくなかったものです。
しかし、テレビや新聞で名前が挙がるような有名人が生前葬を実施したことによって、認知度が上がり一般人も生前葬を行おうという気運が高まっていったのです。
生前葬を実施した有名人では、戦後日本のフィクサーとして知られる児玉誉士夫、「ターキー」の愛称で親しまれた女優・水の江滝子、「バカの壁」で知られる解剖学者の養老孟司などが挙げられます。
生前葬の服装・香典は?
生前葬は、葬儀の一種とはいえ和やかな雰囲気で行われるため通常の葬儀と大きく違うところがあります。
例えば服装。葬儀の場合は弔意を表す喪服または礼服を着用しなければなりませんが、生前葬の場合は喪主兼故人が健在なので服装に関しては平服でいい場合があります。
香典にしても、貰う場合もあればまったく貰わないかパーティ会費として決めた額を徴収するなどの形式をとることがあります。
このあたりのマナーは、喪主兼故人が自由に決められるので参加する際に問い合わせておくとよいでしょう。
生前葬のデメリットは?
生前葬を行うことで生じるデメリットは、「喪主兼故人が本当に亡くなったらもう一度葬儀を行わなければならない」ということです。
生前葬には「葬儀のリハーサル」的なニュアンスも含まれており、「生前葬をやったから本番といえる葬儀をやらなくてもいい」というわけにはいかないのです。
しかも、生前葬の際に香典を集めていたりしたら、葬儀の時に生前葬参加者から香典の二重取りすることになるかもしれません。
また、喪主兼故人が体調を崩してしまい、企画中の生前葬が本物の葬儀になってしまうこともあるので、実施する際はなるべく元気なうちにやってしまうべきです。